製薬会社だけでは規制できず、法律や仕組みづくりが必要
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こんなニュースをわかりやすく解説します
2025年9月30日のニュース
「日本医療政策機構(HGPI)が、肥満症のお薬を“やせたいだけ”で使うことの問題点について報告しました。
ポイントは、①お薬を本来と違う目的で使うと危険がある、②そのとき副作用が出ても国の補償が受けられない、③インターネット広告で誤解を招いている、④製薬会社だけでは供給のコントロールに限界がある、だから法律も含めてルール作りが必要だ、というものです。」
1. まずは「肥満症」と「ただのダイエット」のちがい
ここで登場するのが、パンダ君とハムスターちゃん。
- パンダ君:ちょっとおなかがポッコリ。でも病気というほどではなく、健康診断でも「少し体重に気をつけてね」と言われるレベル。
- ハムスターちゃん:小さくてかわいいけど、脂質代謝の病気をもっていて、体に負担がかかりやすい。これは「肥満症」という医学的な病気の範囲に入る。
つまり、ただ“やせたい”と“治療が必要”は全く別の話。
ここを混同すると「病気じゃないのに強い薬を使ってしまう」危険があるのです。
2. どうして問題になっているの?
最近「GLP-1ダイエット」などの言葉をネットで見た人も多いかもしれません。これは本来「肥満症」や「糖尿病」の治療に使う注射薬を、「やせたい人」が自由診療や通販で手に入れてしまう現象です。
パンダ君「え? ネットでポチッと買えるの?」
ハムスターちゃん「そう、でもそれって危ないんだよ」
なぜ危険かというと…
- 本来の病気にあった使い方ではないので、副作用(たとえば急性膵炎など)が出ても補償が受けられない。
- 医師のきちんとした管理なしに自己判断で注射すると、体調を大きく崩すリスクがある。
- 広告で「これを打てばすぐにやせる!」と誇大にうたうと、本当に必要な人が正しい治療にたどり着けなくなる。
3. スティグマ(偏見)の問題
ここで難しい言葉「スティグマ」が登場します。
これは「肥満=だらしない」というような偏見のことです。
ネット広告で「簡単にやせられる薬!」と広がると、「肥満は努力不足」というイメージが強まり、肥満症という“れっきとした病気”をもつ人が診断や治療を受けにくくなるのです。
ハムスターちゃん「つまり、太ってる=悪いって思われる社会になっちゃうと、必要な治療を受けづらくなるんだよ」
パンダ君「なるほど…。僕はパンを食べすぎただけで、病気の人とはちがうんだね」
4. 誰がどう止められるの?
ここで重要なのが、「製薬会社が止められない」という点。
たとえば、ある病院が「痩身目的でGLP-1注射やります!」と宣伝していたとしても、法律的には医師には処方する権利(処方権)があるため、製薬会社は「その病院に薬を売りません」とは言えないのです。
パンダ君「じゃあ、誰が止めるの?」
ハムスターちゃん「今の仕組みだと誰も完全には止められないんだよ。だから新しい法律やルールが必要なんだ」
5. 具体的なリスクの事例
論点整理の中では、実際にこんなケースも報告されています。
- 自由診療でGLP-1薬を使っていた人が急性膵炎で救急搬送された。
- 過去10年で「美容外科」を名乗るクリニックが2倍以上に増えた。
つまり、美容目的の利用が広がるスピードは速く、その分トラブルも増える可能性が高いのです。
6. 今後の方向性
HGPIの提言はこうです。
- インターネット広告の規制強化
→ 誤解を招く「GLP-1ダイエット」広告を減らす。 - 法律の見直し(薬機法など)
→ 痩身目的の流通をどう管理するか、分野横断的に議論する。 - 医療提供体制の強化
→ 肥満症を専門的に診られる医療機関やチームを増やし、正しい治療へアクセスできるようにする。
パンダ君「やっぱり、お薬は正しい人に、正しい理由で使うべきなんだね」
ハムスターちゃん「その通り! そして、国全体でルールを作らないと、被害はどんどん増えちゃうんだ」
まとめ
- 肥満症薬は「病気の治療」のためのお薬。
- 「やせたいから」と安易に使うと、副作用が出ても補償なし。
- ネット広告は誤解を広め、肥満症患者への偏見を強める危険がある。
- 製薬会社だけでは規制できず、法律や仕組みづくりが必要。
パンダ君とハムスターちゃんの会話を通じてわかるのは、「ダイエット」と「病気の治療」は分けて考えるべきだということです。

